光華(KOUKA:TKR-3901)
(株)トミタ(富田亙正社長)は、さる3月17日に10年ぶり6作目となるオリジナル和紙壁紙「KOZO VI」を発売、その強いこだわりに注目が集まっている。
「KOZO」は、和紙の原料のなかでも特に繊維が太く、長く、強靭で、かつ成長が早いサステナブル素材である「楮」(こうぞ)を原料に、伝統的な因州和紙の製法と独自の加工技術によってつくられた和紙壁紙シリーズである。新作では、素材の可能性をさらに追求するため、これまで採用を見送ってきた技法にも挑戦するなど和紙の新しい魅力を発信する見事なコレクションとなっている。
今回は、並々ならぬ想いをもって「KOZO VI」をつくりあげた(株)トミタの富田亙正社長に企画背景や商品の魅力を聞いた。
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富田社長
現在、日本の壁紙市場は約99%がビニル/プラスチック系壁紙ですが、日本には和紙や箔、織物など世界に誇る素材や技術、技法があります。この日本のすばらしいものを次の時代につなげていく必要がある、そんな想いから、1988年に鳥取・因州和紙の方々とともに「KOZO」はスタートしました。それからシリーズ5までを展開し、その想いをより強めてきたなかで、次の第6作目の開発を控えた2年前に当社の創業100周年を迎えました。
この創業100周年を契機に、改めて後世に残すべき壁紙とは何かを考えるため、これまでの常識や考え方をすべて取り払い、1年間をかけて一から見つめ直すということを試みたんですね。
一般的に壁紙を開発する際には、防火認定や価格、施工性などを考慮しながら、さまざまな制約のなかで進めていく必要があります。そういったことを一旦忘れて、自由な発想で考えていけば新しい方向に進めるのではないか。そこで鳥取の因州和紙の職人の方々、広島の(株)歴清社さんとともに3カ月ごとひとつの季節(春・夏・秋・冬)をイメージしたアート作品づくりを実施したわけです。「夏」は鳥取県沿岸の短い夏に見た、鮮やかなブルーを基調とした海をテーマにしました。また「冬」は飛行機から見た、富士山やヨーロッパのアルプス、シベリアの風景など世界はひとつだという想いも含めて作品に表現しました。
こうした創作活動を通じて、新しい技法や斬新なアイデアが生まれてきました。そして何よりも、若い職人たちが新しい技術にチャレンジするという前向きな姿勢が生まれるようになりました。この創作活動をベースに「KOZO Ⅵ」の企画・開発はスタートしたのです。
これまでの開発は、「現代の名工」にも選ばれたような熟練の方に一点ものを製作してもらって、それを壁紙としてどのように製品化していくか、という受け身の手法が中心でしたが、今回は現場の職人、特に若い人たちから、こうした技法を使って表現してはどうか、という提案がたくさんでてきました。
もちろん、実際に製品化する際には安定性の問題、あるいは一枚の壁紙なら良いけれども空間としてはどうなのか、という企画側の視点もありますから、こちらからも意見を出し、細かく調整しながら形にしていきました。
新デザインのひとつ、「光華(KOUKA)」は、職人が刷毛で幾重にも線を重ねたデザインとなっています。一枚一枚すべて手描きですから非常に手間がかかりますが、重ねたことにより立体感と奥行きが表現できています。まさに妥協なき職人技です。
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