それでは、パリ・デコオフに移りましょう。ハイクラスなエディターが集まる展示会なだけあって、こちらはかなり賑わいが戻ってきた印象ですが、今年はハイムと日程が一部重なり、その間は人出が分散されてしまったようで、一部の出展者からは不満が漏れていたそうです。ボクたちからすると、短い日程に凝縮されて、時間も滞在費用も節約できて悪くはないのですが。
今回のデコオフでまず印象的だったのは、今年は昨年にも増して刺繍が増えていること。特に太い糸を刺した、クルーエル刺繍のような刺繍が多く見られました。ピエールフレイは以前から得意としている手法なのだけど、今年も相変わらず、ポップな色使いを刺繍という明らかに上等な手法で上質にまとめ上げる技術は見事でした(⑩)。
昨年から日本での販売元が日本フィスバになったポルトガルのALDECO。今年はDOURO VALLEYという有名なワインの産地がテーマになっていて、その風景を刺繍で描いたこちらの生地は柄も良いのだけどこの色が印象的でした(⑪)。こういった赤みのあるブラウンは今年の注目色なのだけど、ポルトワインの色を彷彿させる絶妙な色味の醸し出す雰囲気が最高でした。
ハーレクインはいつもと何か雰囲気が違うな、と思ったら今年は陶芸家とのコラボでコレクションを出していました。和のテイストが多くてそれも良かったのだけど、中でも「ポットショップ」と名付けられたこちらの刺繍は、今年らしい色使いと陶器を幾何学に見立てた柄が魅力的でした(⑫)。今年はさまざまなデザイナーとコラボレーションするエディターが多かったです。マルセル・ワンダースとコラボしたコレクションを発表して注目を集めたのが、フィッシュバッハ1819。モーイのイメージが強いワンダースは、どんなユニークなコレクションを出してくるのだろう? と思ったら、まさかの真っ白! というか無彩色。「古代の記憶」と名付けられたこのコレクションは、ほとんどの生地にヘンプを用いていて、伝統的な素材や職人技に新たな命を吹き込む、としています。初めは面白みがないように思ったけど、知れば知るほど深い思想が込められているのがわかり、これが今のトレンドを象徴しているのだ、と思い至りました(⑬)。
意外なコラボレーションといえば、アメリカのクラベットはファッションデザイナーのジョセフ・アルチュザラとコラボしたコレクションを発表。中国、アメリカ、フランスの混血というのが、どことなく作品にも表れていて、そのオリエンタルな世界観が凄く素敵でした(⑭)。
ジャカードベルベットも今年特に多く見られた手法です。やはり全体的に「オモアツ(重厚)」傾向は続いているようですね。その中でもダントツで惹かれたのがMISIAのこちら(⑮)。ランダムなジャカードベルベットにデジタルプリントが施されて、普通ならワイルドな印象になりがちなところが、絶妙に品よくまとめられていて、「カルチェラタン」とパリの学園都市の名付けられたネーミングもピッタリです。
姉妹ブランドのCAMENGOからは「TERRAZZO」と名付けられたこちら。サステナブルな素材として再注目されているテラゾをポップに描いたベルベットは、カメンゴらしい軽やかさが好印象でした(⑯)。
|
|