風見鶏の館
壁紙の製造・販売を手掛けるサンロック工業(株)(本社・大阪市/竹中洋二社長)は、国の重要文化財である旧トーマス住宅(通称「風見鶏の館」)の耐震工事の一環として行われた改修工事において、神戸市の依頼を受けて、壁紙をデジタルプリントで再現した。
「風見鶏の館」は、かつて神戸に住んでいたドイツ人貿易商のゴットフリート・トーマス氏が、自邸として明治42年頃に建てた建物である。色鮮やかな煉瓦の色調と石積みの玄関ポーチ、2階部分のハーフ・ティンバーなど非常に重厚な外観で、内装もユーゲント・シュティール(アールヌーヴォーのドイツでの呼称)の装飾が使われるなど見応えのあるものとなっている。
再現された壁紙
今回の改修では、建築当時の姿を保ちながら耐震補強が施されたとともに、綿密な調査により復元工事がなされた昭和58年当時の姿を再現すべく行われたもの。特に内装については、建造物保全および歴史的観点から、施工は日本の伝統的仕上げ技法である「袋張り・重ね張り工法」が求められた。そのため、数々の歴史的建造物の内装材料製作及び施工実績を持つ㈱池袋松屋(本社・東京中央区、伴紀子社長)とともに、デジタルプリント技術で定評のあるサンロック工業㈱が壁紙製造会社として選ばれた。
サンロック工業の竹中社長は、当時の写真や資料をもとにデジタル技術を用いて再現、「色や柄の再現もさることながら、袋張り・重ね張りに耐えうる紙の選定をはじめ、施工性、印刷適性、質感・形状などを配慮するなど、池袋松屋さんの協力を得ながら進めてきました。さまざまな制約がある中で、現物の色味に近づけるのはとても苦心しました」と語る。
こうしてデジタル技術によって当時の壁紙が蘇った。
「今回の再現事業に関わって、改めてデジタルプリント技術の奥深さを感じました。インクジェットプリンターを導入すれば、すぐに壁紙メーカーになれる、という考え方もありありますが、簡単ではありません」と語る竹中社長。最新のデジタルプリント技術と日本の伝統的な施工の融合をご覧いただきたい、とのことであった。
|
|