本紙紙面
2026年7月25日配信
【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第6回】
釣りの組み立て――動線を1本の糸でつなぐ

海(商圏)を定めて、魚(ターゲット)を決め、その魚がいる深さ(顧客の段階)を見極め、タイミングを図り販促を実行した。それでも魚が釣れない。そんな経験は少なくないだろう。
これほどまでに緻密に設計した上で実行した販促である。狙った顧客には情報は届いているはずだ。それなのに来店に至らないばかりか、問い合わせすらない。そんなとき、多くの経営者は、「今回のチラシは内容が良くなかった」と判断してしまうのではないか。それでは、改善するのは内容のみとなる。
本当にそうなのだろうか。実は、チラシ自体は魅力的で顧客の心にしっかりと届いていたにも関わらず、ゴール(来店/本来のゴールは「成約」だが、ここでは「来店」をゴールに定める)に至るまでの道のりのどこかで「釣り糸がプツリと切れてしまっている」ケースが意外なほど多いのである。
販促とは、広告を出した後の「顧客の行動」まで完全に分析・設計して、初めて成果につながるものである。

■ゴールへのプロセスと「糸が切れる場所」
顧客は広告を見た瞬間に来店するわけではない。顧客が広告を見てからゴールに至るまでには、いくつかの行動プロセスがあり、そのどこか1つでも違和感が生じれば、その行動は止まってしまう。このプロセスは「1本の糸」でつながっていなければならない。
それでは、来店に至る販促の現場において、一体どこで離脱しているのだろうか。文字通り「命取り」となっている離脱ポイントを検証してみよう。
離脱ポイント①
販促物とホームページの「世界観の不一致」
チラシやDMを見て興味を持った顧客は、次に「スマホやPCで検索する」という行動をとる。
このとき、デザイン会社に頼んで制作した洗練されたチラシに対し、受け皿となる自社のホームページが未だに古いままであったり、新着情報の最終更新が「2023年」で止まっていたりしたらどうなるだろうか。顧客は一瞬で「この店、本当に大丈夫か?」、「本気で営業しているのか?」と不信感を抱いてしまう。するとここで糸が切れてしまうことになる。また、チラシやDMで華々しくセールや限定イベントを謳っているにも関わらず、ホームページにその情報が一切連動して載っていないのも致命的だ。
顧客は「本当にこの店で合っているのかな」と迷い、離脱していく。
離脱ポイント②
高すぎる「問い合わせ」のハードル
顧客が「比較検討」や「行動」を起こそうとした際、問い合わせ方法が複雑なのもよくある失敗例だ。
例えば、ホームページの問い合わせフォームを開いた途端、名前や詳細な住所の入力が「必須」とされているケースだ。今の世の中、「少し気になるから気軽に聞いてみたいだけ」というライトな顧客は、最初から個人情報を細かく登録することを極めて嫌がる。ここで多くの顧客が面倒になって離脱する(予約フォームで手が止まる)のである。
このハードルを下げるために有効な手法の1つが「LINEの友だち登録」だ。名前を入れる必要すらなく、「チラシに載っていたあのカーテンって何ですか?」とスマホからチャット感覚で簡単に質問できる環境をつくるだけで、顧客とのつながりは劇的に維持しやすくなる。
同様に「電話」のハードルも未だに高い。携帯電話からかけるのが当たり前の時代に、専門店側がフリーダイヤルを用意せず一般電話のままにしていれば、顧客は「わざわざこっちが通話料を払ってまでかけるのもな……」と躊躇し、かけるのをやめてしまう。
こうした「問い合わせ」へのハードルを取り除くことは、糸をつなげる第1歩となる。
離脱ポイント③
ネット上の「情報不足」
他社との価格比較や実績確認の段階で、必要な情報が足りずに不安が解消されなければ顧客は離脱する。
施工事例が少ない、店舗写真が古い、スタッフ紹介がない。営業時間が分からないという初歩的なミスも考えられる。
また、チラシでどれほど「地域密着で安心の店です」とアピールしていても、顧客がグーグルマップで店を検索した際、口コミの評価が著しく低ければ、当然その段階で行くのをやめてしまう。
■店の中でも糸は切れる
無事に1本の糸をつなぎとめ、顧客を「来店」まで促すことができたとしても、まだ安心はできない。実は店の中に足を踏み入れた後にも、ゴールに届かない原因は無数に存在する。
スタッフの接客不足や営業力不足、あるいは店内のPOPの分かりにくさやディスプレイのセンスの悪さなど、最後の最後で「購入(成約)」に至らず逃げられるケースも多い。
販促は店の入口で終わるものではないのである。
■ゴールまで1本の糸でつながっているか
販促がうまくいかないとき、多くの経営者はただ単に「折り込みチラシはもうダメだ」、「時代は紙じゃない」と媒体のせいにする。しかしそれは原因の追究から逃げているだけだ。プロセス全体のどこに糸が切れる場所があるのかを突き止めない限り、どんな道具を使っても魚は釣れないのである。
ゴールまでのプロセスを今一度確認し、途切れないための改善を行う。これも重要な販促設計なのだ。
ゴールまでの動線が1本につながったら、いよいよ実際に魚を釣り上げるための具体的なツール選びに入る。
次回は、どのような媒体(チラシ、SNS、DMなど)をどう使い分けるべきかという「道具(媒体)」の話、そして顧客を行動へ駆り立てるためのキャッチコピーや文言といった「エサ(メッセージ)」の設計について考察する。
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第1回】
「販促」とは需要創造の仕組みづくり
設計思考への転換
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第2回】
海――商圏を決められない専門店は勝てない
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第3回】
魚――誰を狙うのかを定める
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第4回】
深さ――顧客は今、どの段階にいるのか
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第5回】
タイミング――「なぜ、今なのか」という必然性
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第6回】
釣りの組み立て――動線を1本の糸でつなぐ
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