本紙紙面

2026年8月25日配信

【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第7回】
道具より先に、「伝える価値」を設計する



 前回まで、商圏、ターゲット、検討段階、タイミングを設計し、さらにゴールまでを一本の糸でつなぐ動線を整えた。それでも思ったような反応が出ない。販促設計ではよくあることである。問題は、ここでどのように考えるかだ。

■問題は「媒体」なのだろうか

 多くの経営者は、まず「媒体」を見直そうとするのではないか。
 「紙媒体が時代に合っていないからだ」
 「ホームページを新しくしよう」
 「今はSNSでの販促が流行っている」
 もちろん、媒体を見直すことは決して悪いことではない。しかし本当に改善すべき原因はそこなのだろうか。



 改めて、釣りにたとえて考えてみよう。チラシ、DM、ホームページ、SNS、イベント。これら「媒体」はすべて釣り竿、つまり「道具」にすぎない。「道具」とは、顧客(魚)に情報を届けるための手段であって、成果そのものを生み出すものではないのである。

■心を動かすのは「メッセージ」である

 それでは顧客の心を動かすものは何か。それが「エサ」、すなわち伝えるメッセージだ。

 例えば、内窓リフォームを提案するとき、「断熱性能○○」、「補助金対象」といった説明だけを並べても顧客の心は大きく動かない。性能や機能は大切だが、それはあくまでも商品の説明でしかない。割引率表示など理由なき安売りも同様だ。

 一方で「冬の朝、暖房をつける前からリビングが暖かい暮らし」、「光熱費を気にせず、一年中快適に過ごせる毎日」、「結露を気にしなくていい朝」など未来の暮らしをイメージできる言葉は人々の感情を動かす力がある。

 リフォーム提案も同様だ。「キッチン交換工事」ではなく「家族が自然と集まり、料理が楽しくなるキッチン」。あるいは「浴室リフォーム」も「一日の疲れをゆっくり癒せるバスタイム」。特にインテリア専門店であれば、「カーテンの掛け替え」ではなく「朝日が心地よく入り、毎日が少し気持ちよくはじまる部屋」といったように、暮らしを想起させるメッセージを届けていく。

 顧客は商品そのものを買いたいわけではない。その商品によって得られる未来や、悩みが解決したあとの生活を求めているのである。

 これは、インテリアを提案するインテリア専門店であれば、より強く意識したい考え方である。インテリア専門店が扱っている商品は、暮らしに不可欠なものであると同時に、住む人の人生を豊かにするものでもある。だからこそ、「何を売るのか」ではなく「どんな暮らしを届けるのか」を伝えることが重要になる。

■まず「顧客の未来」を設計する

 そして、そのメッセージが決まって、はじめてどの「道具」を使うのかを考える段階に入るのである。新聞折込チラシが向いているのか、DMなのか、ホームページやSNSなのか。あるいは複数の媒体を組み合わせるべきなのか。

 海(商圏)を決め、魚(ターゲット)を定め、その魚がいる深さ(検討段階)を見極め、動くタイミングを図り、ゴールまでの動線を整え、どのようなメッセージを届けるのかを定めた上で、「道具」としての媒体を決めるのである。つまり道具選びは最後なのだ。

 先に道具を選んでしまうと、SNSでどのような情報を投稿すればいいのか、ホームページにどのような情報を書くのか、という発想になってしまう。本来伝えるべき価値が曖昧になってしまう。

■顧客は「商品」を買いたいわけではない

 まず設計すべきなのは、顧客の未来である。どんな悩みを解決し、どんな生活を届けたいのか。そこが明確になれば、キャッチコピーも写真もチラシやホームページ、SNSも自然と定まっていく。

 多くの販促が失敗してしまう理由は、「道具」を間違えたからではない。顧客が「欲しい」と思える「エサ」、つまりメッセージが設計できていなかったからである。

 顧客は商品を買わない。その先にある、理想の未来を買っているのである。

           ◆

 次回は、その設計した販促計画を「どのくらい届ければ成果につながるのか」。
 販促の成功を左右する最後の設計、「撒き量(予算・配布数・回数)」について考えていきたい。

■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第1回】
「販促」とは需要創造の仕組みづくり
設計思考への転換


■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第2回】
海――商圏を決められない専門店は勝てない


■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第3回】
魚――誰を狙うのかを定める


■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第4回】
深さ――顧客は今、どの段階にいるのか


■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第5回】
タイミング――「なぜ、今なのか」という必然性


■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第6回】
釣りの組み立て――動線を1本の糸でつなぐ


■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第7回】
道具より先に、「伝える価値」を設計する



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インテリアビジネスニュース8月25日号発行