川北芳弘氏
本年3月にJIS規格が改訂され、「革」「レザー」と呼べる製品は動物由来のものに限定されました。これによりヴィーガンレザーなど植物由来のレザー調製品を「〇〇レザー」や「〇〇革」と呼ぶことができなくなりました。アパレル、インテリアなど皮革を取り巻く業界でとても大きな話題になっていますが、今回はその背景についてお話しします。
まず当連合会は靴、バッグ、財布、アパレル、インテリアなどさまざまな皮革関連産業における原材料、製造、卸、ブランドなどの企業・団体が加盟する日本最大の皮革団体です。私自身はソファ、椅子などインテリアの革をメインに製造卸をしている(株)川善商店の代表を務めています。
現在、私たちは革製品のサステナビリティを発信するプロジェクト「Thinking Leather Action( シンキングレザーアクション)」を推進しています。
このプロジェクトが発足したきっかけは、昨今のサステナブル意識の高まりの中で革製品について一部メディアやヴィーガン志向の強い方などを通じて誤った認識が広まりはじめたことでした。
例えば、革製品を製造するために動物を殺している、革製品を使わなければ牛のゲップが減りCO2が削減できるといったものです。一部の活動家が百貨店の革製品売場に「動物を殺すな」と怒鳴り込むような事態にまで発展しています。そうした背景の中から、革の代替品としてリンゴやサボテン、キノコ類を活用したレザー調の製品が生まれ、もてはやされるようになってきました。
その対策としてスタートしたのが「シンキングレザーアクション」です。
実際に革製品をつくるために動物を屠殺しているのか、あるいは革製品をやめればCO2は減るのか。それはまったくの誤解です。基本的に皮革産業は「食」、つまり畜産がベースとなっており、革製品のために牛を育てるということはありません。人が牛肉を食べる限り牛の皮革は必ず発生します。現在、革製品になっている数は日本で約100万頭分、世界では1億5000万頭分にのぼります。もし皮革を使わないという選択をするとなると、その1億5000万頭分の皮革が余ることになります。それを埋め立てる、あるいは焼却する。それこそ環境破壊につながります。今後人類が牛肉を食べないということなら整合性はあるのですが、そのようなことはおそらくないと考えています。
太古の昔から、人間は動物を飼い、お肉を食べて、残った皮を使って衣服をつくり着用してきました。その意味では革製品とは人類最古のアップサイクル品です。それをやめて廃棄し焼却し、その代わりにリンゴやサボテン由来のレザー調製品を使う。例えば、リンゴ由来の製品はリンゴの皮の搾り滓を粉体にして樹脂で固めて表面をレザー調に加工します。樹脂は石油由来です。これが本当にサステナブルといえるのでしょうか。そうしたことを改めて考えていただきたい、というのが「シンキングレザーアクション」です。
現在、こうした皮革・革製品に関する正しい情報の発信をHPやSNSを通じて行っているほか、先般は食肉業界とのコラボでイベントも開催しました。こうした活動の中で、今回JIS規格も改訂され、皮革に対する認識が急速に是正されはじめています。
もちろん皮革も完璧な素材ではありませんが、インテリア業界の方々にも革製品について正しい知識を持っていただければと思います。 (談)
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