インテリアコーディネーターの仕事とは、顧客の要望に合わせて機能的で美しい空間をつくること。しかしそれだけでは本当のニーズは捉えられないとして、長年にわたり研究と実証を重ねて独自メソッド『空間デザイン心理学®』を構築、2019年に(一社)空間デザイン心理学協会を設立するなどその普及活動を行っているのが、(有)カサゴラコーポレーション一級建築士事務所代表の高原美由紀氏である。
「人は無意識のうちに住まいからさまざま影響を受けています。夫婦仲の問題、子供の育ち方、片付けられない間取り。それらは機能的で美しい空間をつくっても解決できません。心理学に基づいた科学的なアプローチが必要なんです」と高原氏は語る。
高原氏
高原氏がインテリアの世界に入ったのは今から30年近く前、設計事務所にICとして勤務したのがきっかけだ。その後はインテリアプランナー、一級建築士、福祉住環境コーディネーターなどさまざまな資格を取得、独立後は個人宅のリフォームをはじめモデルルーム設計、商業施設などの大型案件も手掛け、建築家とも対等の立場で空間デザインの仕事を進めてきた。
この経歴だけをとっても相当レベルの高いICであることが伺い知れるが、その高原氏が『空間デザイン心理学®』を追求することになったきっかけが、20年以上前に手掛けたあるリフォーム現場だったという。それはリビングに壁面収納が欲しいという片付けが苦手なユーザーのスケルトンリフォームだった。
「お客様の要望を100%満たした完璧なプランを提案しました。当初はとても喜んでくださったのですが、1年後に伺うと、収納がまったく使われずモノが散乱していました。単に要望に応えるだけではダメだということに気付かされました」
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