本紙紙面

【専門店かく闘えり 356】サンアベニュー(山梨県甲府市)
ジャズ型に転換し方向が明確化

望月夫妻とトロフィー
望月夫妻とトロフィー

「二人で会社を引き継いでからは、ずっと方向性に悩んできました。もともと小規模な専門店だったのですが、修行していた会社は売上規模も大きく経営手法も先進的で、あのようにならなくてはいけないという思いが強くありました」

 1996年以降、専門店を取り巻くオーダーカーテンビジネスの在り方も大型化が進んでいた。ロードサイドに100坪以上のショップを出店し数千点のサンプルを並べ、チラシで一気に集客するというスタイルが主流だった。

 望月社長もこの当時は、売場に吊りサンプルをズラリと並べてチラシで価格訴求をし、近隣のカーテンショップとの相見積りを繰り返していたという。100坪以上の店舗物件を借りる検討をしたこともあったそうだ。

 「一定の売上規模にはなりましたが、まったく気乗りしていない心境でした。量をこなしていくやり方に疑問を抱きながらも他に方法が分からないという状態でしたね」

 そんな苦悩の日々が5、6年以上続いた望月社長に転機をもたらしたのが、たまたまタウンページをみて来店したというイギリス住宅を建てた顧客だった。

 「その方の家に伺ってみると、見たことのないような素敵な住宅でとてもインテリアのレベルが高く、そのライフスタイルに憧れを抱くほどでした。このインテリアに負けないような提案を、お客様と真剣に向き合いながら全力で行いました。それが認められて注文をいただき最後は仕上がりに感激していただいたんです。そのときに自分はこういう仕事がしたかったのだと気づきました」

 その後すぐに夫婦でイギリスに旅行し、改めて本場のインテリアを感じ取って方向転換を決意した。

 方向性が定まってからは、イギリスをはじめ海外のインテリアを勉強しながら提案の幅を広げていった。また淳子さんはスタイリングプロに入会、さらにBIID(英国インテリアデザイナー協会)にも入会するなど見識を広げてその提案力に磨きをかけていった。結果的にデザイン提案を求めるユーザーが紹介などを介して自然と集まるようになっていったという。

 「修行先の師匠からは、経営にはオーケストラ型とジャズ型があると教えられました。指揮者の指示で動くオーケストラのような組織なのか、個人の意志を尊重するジャズを目指すのか。ジャズ型に方向を定めてはじめてその教えの意味が理解できました。今は迷いもなく楽しく仕事をしています」

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インテリアビジネスニュース10月10日号発行