業界ニュース
2026年8月10日配信
BIID 東大・加藤教授迎え建築とインテリアに関する特別講演会を開催

講演会の様子

加藤教授
英国インテリアデザイン協会日本支部(飯沼朋子会長)は、8月9日(日)、東京大学大学院工学系研究科の加藤耕一教授を講師に迎えて、「モダニズム的建築観の超克とインテリアの復権」と題した特別講演を、東京大学本郷キャンパスにて開催した。
加藤耕一教授は、建築史・建築理論を専門とし、西洋建築史を軸に、建築の構築術、時間性と再利用、物質性などについて研究、近代の成長社会を前提とした新築中心の建築観を歴史的な視点から捉え直し、建築を長く使い続けることや時間とともに生まれる価値について考察している。著書に『時がつくる建築―リノベーションの西洋建築史』『建築のラグジュアリー』などがある。
講演では、自身の研究や著書にて展開する理論をもとに、近代建築を支えてきたモダニズムの価値観を、より長い時間軸から捉え直す視点が示された。19~20世紀は人口増加や戦災・震災からの復興を背景に、「いかに早く、安く、質の高い建築をつくるか」が大きな使命となり、建築も新築を中心に発展してきた。一方、人口減少や空き家問題が顕在化する現在では、「つくる」ことだけではなく、既存建築をいかに使い続けるかという発想が重要になっているとした。
その具体例として紹介されたのが、古代ローマの円形闘技場である。かつて娯楽施設として使われていた建築が、時代の変化に応じて軍事要塞となり、その後は住宅として利用され、やがて都市の一部へと溶け込んでいった。こうした事例から、建築を完成時の姿だけで評価する「点」の建築史ではなく、用途変更や改修、再利用を重ねながら続いていく「線」の建築史として捉えることの重要性を指摘した。建築は長く使われることで、単なる物理的な構造物ではなく、そこに住む人や使う人の愛着、誇り、記憶を蓄積していく存在になるという。
また、古代建築の柱や彫刻などの部材を再利用する「スポリア」の事例を通じて、統一されたデザインだけが美しいという近代的な価値観にも疑問を投げ掛けた。異なる時代、異なる素材の部材を組み合わせて使う中世建築の姿には、再利用ならではの多様性や豊かさがあるとした。
さらに講演では、建築を長く使い続けるうえでのメンテナンスの価値にも言及。20世紀的な価値観では「メンテナンスフリー」が優れたものとされてきたが、実際には手を掛け、直し、触れ続けることによって、その建築や素材への愛着が深まり、時間とともに価値が高まっていくとした。こうした考え方を、21世紀における新たな「ラグジュアリー」として位置付けた。

沖野氏とのトークセッション
そして後半では、19世紀の被覆論や布、カーペット、カーテンなどによって構成された室内空間にも焦点を当てた。モダニズムの中では装飾が否定され、インテリアは建築に後から加えられる二次的なものとして扱われてきたが、本来、居心地のよい空間をつくるという意味では、インテリアこそが建築の出発点とも考えられると指摘。20世紀のモダニズムを絶対的な基準とせず、19世紀と21世紀をつなぐ長い歴史の中で相対化することで、時間性、物質性、再利用、メンテナンス、そしてインテリアの価値を改めて見直す必要性を提起した。インテリアの存在意義を改めて問い直す、業界関係者にとって示唆に富む内容となった。
なお特別講演に先立ち、講演会の会場となった「東京大学工学部第1号館15号講義室」のリノベーションについて、加藤教授とBIID日本支部元会長の沖野俊則氏とのトークセッションも行われた。講演会終了後は懇親会も行われた。
BIID日本支部のホームページ
https://biidjp.org
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