特集

2011年12月11日配信

【特集】 インテリアの被災地支援とは
ふんばろう東日本支援プロジェクト/ミシンでお仕事プロジェクト
モノの支援から自立支援へ 店頭販売など専門店への期待大

JAPANTEXでのブース
JAPANTEXでのブース

熊谷安利氏
熊谷安利氏

東日本大震災の被災地支援も積極的に行われた今年のJAPANTEX。その中でも、特に大きな注目を集めていたのが、「ふんばろう東日本支援プロジェクト/ミシンでお仕事プロジェクト」の出展ブースだった。
同プロジェクトのリーダーを務めているのは、今年7月まで『カーテンギャラリー・ハンザム』(神奈川県川崎市)の店長だった熊谷安利氏。熊谷氏は前職時代からツイッターやフェイスブックといったSNSを用いて業界関係者と情報交流を行ってきたが、退職後にボランティア活動をはじめてからも続いていたこのSNSでの交流が、今回の出展につながることとなった。今年からSNSの取り組みを開始したNIF事務局が熊谷氏の活動を知り、JAPANTEXでの出展ブース提供を申し出たというわけだ。会期中もSNS仲間がブースの設営や接客を支援、さらにツイッターなどを通じて積極的に情報発信したことで業界各社のトップからも高い関心が寄せられた。
「今回出展できたことで多くの企業さんから支援のご提案をいただくことができました。何よりプロジェクトについてご理解いただけたことが、大きな成果だと思っています」と熊谷氏は語る。(インテリアビジネスニュース本紙12月10日号より)

◆ ◆ ◆

「ふんばろう東日本支援プロジェクト」とは、「必要なモノを、必要な場所へ、必要なだけ送る」を合言葉に、早稲田大学院(MBA)専任講師の西條剛央氏が立ち上げた、日本最大級の被災者支援団体である。周知の通り、行政主導の被災地支援は、公平性を重んじるばかりに遅々として進まないケースが散見された。それに対し、とにかくやれるところから先行して行う、という考え方の下に展開するのが「ふんばろう東日本支援プロジェクト」で、約1600名のボランティアが登録し、寄付によって集まった物資を被災地に送り続けている。
この「ふんばろう東日本支援プロジェクト」では、送る物資の種類などによってさまざまなプロジェクトが展開されている。例えば生活必需品を送る「支援物資プロジェクト」、家電製品を送る「家電プロジェクト」、「ガイガーカウンタープロジェクト」などであるが、JAPANTEXに出展した「ミシンでお仕事プロジェクト」もそうしたプロジェクトの1つである。
「ミシンでお仕事プロジェクト」とは、寄付金によって最新式のミシンを購入(1口3000円/6口分1万8000円で1台購入)して生地とともに被災地へ送り、現地の方にエコバックやランチョンマットを製作してもらい、それを販売して収益を得る、ということを目指したプロジェクトだ。単に物資を送るだけでなく、その先の自立支援まで考えるという意味では、さらに一歩進んだ支援プロジェクトといえよう。現在その仕組みの構築を行っているところである。

ワークショップの様子
ワークショップの様子

最新式ミシンの操作を習得
最新式ミシンの操作を習得

出来上がったエコバック
出来上がったエコバック

さて、この活動がはじまったもともとのきっかけとは、被災者からの要望だったという。
「被災者の方々が着ている洋服は、基本的に支援物資ですので、サイズが合わないものが多いのが現実です。仮設住宅に入れば家電6点セットがもらえますが、当然ミシンはありません。そこでミシンがあればという声が多数寄せられました」
こうした声を受け、早稲田大学の教授会が100万円を用意してミシンを購入、10月に南三陸町でミシン操作を教えるワークショップを開き、その参加者にミシンを渡したという。これが大盛況だったため、当初単発の企画だったこの活動をプロジェクト化することになったのだそうだ。
熊谷氏が同プロジェクトに参加したのは、第2回目のワークショップからである。「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の一員として被災地でボランティア活動を行っていた熊谷氏に、協力の要請があったそうだ。
「私自身は、ミシン操作を教えることもできませんので、このときはお手伝いという感覚でした。ただ、急遽決まった第2回目のワークショップでしたので、とにかく資金がないということで、ツイッターでこの活動の情報を発信し、寄付の呼びかけを必死に行いました。すると著名人からもリツイートしていただくなど、もの凄い反響があり、一気に資金を集めることができました。ツイッターの本当の凄さを実感しました」
こうしてプロジェクトの継続化が実現、熊谷氏自身も中心人物となり、その後はリーダーとしてプロジェクトを率いるようになった。すでに被災地に約250台のミシンを送ったとのことだ。
ところで、ミシンの場合、他の家電と違ってただ配るだけでは不十分である。「お仕事プロジェクト」という名前の通り、その先の仕事につなげるべく自立を促す必要がある。ワークショップを開催するのはそのためだ。
「ワークショップでは、最新式のミシン操作を学んでもらいます。また一定以上の技術を習得した方にお渡ししたいので、一旦ミシンをお貸しし、1カ月でエコバック8枚製作という課題を設定し、それをクリアできた方に差し上げるという形にしました」

こうして約250人にミシンが渡ったわけだが、現在のもっとも重要なテーマとなっているのが、出口の問題、すなわち仕事をどのように創出するか、という問題だ。被災者の方々が、ミシンを使い実際に収入を得てもらうことが、このプロジェクトの最大の目的なのである。
「震災から9カ月経った現在、モノを送るという支援から、その先の自立支援が重要になってきています。仕事をしたくても出来ない被災者の方がたくさんいるのです。そうした方のお力になりたいと思っています」
とはいえ、この部分が一番難しいところでもある。それでも具体的に進んでいる代表例が、熊谷氏のSNS仲間である静岡県の『インテリアハウス窓』(小池哲生社長)の取り組みだ。同店では、提供した生地で製作されたランチョンマットといった小物製品の買い取りを行い、店頭での販売を開始したのである。この仕組みをつくるために、小池社長は南三陸町でのワークショップに生地を持ち込んで参加したとのことだ。
「非常にありがたいご提案でした。実際に販売されると聞いて、モチベーションが非常に高くなりました。この他にも専門店さんやメーカーさんからは生地のご提供をたくさんいただき、本当に感謝しております」
この他にも、ユナイテッドアローズやフェリシモなどから販売に関する提案を受けているところだそうだ。
こうした販売協力は、インテリア専門店でも比較的小さな負担でできるものである。全国のインテリア専門店が店頭で同プロジェクトの製品を販売すれば、インテリア業界全体として同プロジェクトの支援ができることになる。ちょうどリーダーの熊谷氏が元インテリア専門店関係者という点も非常に意義深い。
「そのためにも、デザイン開発やブランド化に取り組んでいきます。また現地のネットワーク化など生産体制もしっかり整えていくつもりです」
「実はボランティア活動をしてきて、あの厳しい状況を目の当たりにすると、インテリアの出る幕はないのではないかと無力感で一杯でした。しかし、このミシンのプロジェクトはインテリアを生かせる支援策になると思っています」
独立してカーテン専門店を立ち上げるために前職を辞め、その間の一夏を捧げるつもりではじめたボランティア活動だったが、今はどっぷりとのめり込んでしまったという熊谷氏。「業界に戻ってこられるのか不安にもなりますが、とにかくできるところまでがんばっていきたいと思います」とのことであった。

熊谷氏の連絡先
kumagai.fumbaro@gmail.com

「ミシンでお仕事プロジェクト」
http://wallpaper.fumbaro.org/machine

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